A社に入社して約3年。
ついにその時が...
⑤サヨナラ編
研修を続けていると、いよいよ自分がいなくても会社はまわるし、自分がいても何もできないということを実感していった。
劇的に何かが変わるわけではなく、またこの会社に尽くしたいだとか、もっと成長していきたいという未来像を描けていなかった。
これだけでも十分退職を考える理由になるが、極めつけは、上司や先輩も猛烈に働いており、結局過去経験した過重労働に戻ることになるのが確定している点だ。ついていける自信はずっと無い。
ようやくここで、現実的に退職するプランを考え始めた。
今までは、「辞めたい」であり、ここからは、「どうすれば辞められるか」にシフトチェンジした。
あまりに遅い。けれどついに、方法とタイミングに頭が動いたのは、大きな一歩だった。
最後の1年弱、私の上司は当初とは変わっており、いわゆる本部長クラスの管理職。
この方が、非常に思慮深く、そして人情味がある方だった。他の管理職がそうでないわけではないのだが、会社全体のある種狂気じみた風土のなかにあって、厳しさと温かみのバランスが特殊に感じられた。
辞めたいです、はいそうですか、で辞められる職場ではない。適当にでっちあげた理由では論理立てて説得されたときに二の句が継げなくなるのは目に見えている。
そして一定信頼している上司の言うことに理を感じれば、自分は引き下がる。
ここまでの未来が明確に見えた。
よって、脳内シミュレーションを繰り返した。
退職するに足る理由を数点用意し、退職させていただきたい、と明確に伝える。
様々考えた結果、実力不足、身体の不調、親の介護。この3本柱をカードとして持つことに決定。まあいずれも真実であって、嘘ではない。
結果、惜敗。
経緯を簡単に。
まず、話をする時間をとってもらうためのアポを取る段階で、驚くほど緊張する。お時間をいただきたいのですが、が口から出てこず、ついつい何もなかったことにしたくなる。そんな内なる自分を必死に抑え込みながら、清水から飛び降りる覚悟で切り出し、アポを取り付けた。
そうして部屋に2人だけ。切り出したのだが...。
まだ3年、仕事もこれからだから、退職の決断は早いのではと切り替えされる。
結局、少し時期を置いてまた話し合っていくという形で落ち着いた。
まだ続くのかという落胆と、状況が変わったという希望。
まあ、この期に及んできっぱりと断ち切れない自分の弱さには、落胆通り越して呆れていた。
あっという間に一月が過ぎ、何回目かの面談。
最終的に、上司が折れて、私が退職をすることで決定した。ライター業等を考えているが、一旦身体の不調を治すことに専念すると伝えていたので、お大事にとのお言葉まで頂いて。
私にとっての退職したい一番の理由は「実力がないこと」「力を発揮できないこと」であり、上司もそれをよく分かっていたと思うが、お互いにそれははっきりとは言及しなかった。ふざけるなと断じることもできたろうに、死んだ顔をした私が発する言葉から意思を汲み取って、最大限の年長者としての意見を述べてくださっていた。
最後の日は、一部の上司にのみ挨拶をし、そのまま退社した。
会社は変わらず、外に出た時の街並みも変わらず、いつも通りの光景。
無力だなあと思ったのを覚えている。
次の会社を決めているわけでもなく、その余裕もなかった私にとって、ここから先の数年も別の「地獄」が待っていた。ただそれはまた別の機会に。
とはいえ、ようやく約3年勤めた会社を辞めて別の道を進む。この決断をできた点については、自分を褒めてやりたい。もっと早くてもよかったとは思うが。
①から⑤まで、退職にかけての一通りの流れのなかで、全体の総括はまたしたい。